【逆転の広島】先制されても勝率5割超え!カープに逆転勝ちが多い理由とは?

逆転の広島

2017年も前半戦が終了し、今日から2日間はオールスターゲームが開催される。

すでに2位と8ゲーム差を付けて独走態勢に入った広島東洋カープだが、その強さを象徴するかのように「逆転の広島」という言葉が頻繁に叫ばれている。

12球団トップのチーム打率.278を誇る打線は強力で、前半戦だけで実に29回もの逆転勝ちを成し遂げており、これが逆転の広島と呼ばれる所以だろう。(2番目に多いのが阪神、横浜、ソフトバンクの19回)。

打線の力は言わずもがなだが、それにしてもこれだけ逆転勝ちが多いというのも不思議ではある。ここでは前半戦での各種データから「逆転の広島」の理由を探っていきたい。

先制された試合での異常な勝率

逆転の広島を象徴するデータとして、「先制された試合での勝率」が挙げられる。以下はセ・リーグ6球団を「先制された試合の勝率順(7/12時点)」で並べたものだが、広島が突出した勝率を誇っていることがわかる。

球団 勝率 順位
広島 48 25 21 2 .543 1位
阪神 36 12 24 0 .333 2位
中日 31 8 22 1 .267 5位
横浜 37 8 28 1 .222 3位
巨人 46 10 36 0 .217 4位
ヤクルト 48 10 37 1 .213 6位

※2017年7月12日時点の先制された試合の勝率

他5球団を見てもらえばわかるように、先制された試合の勝率というのは通常かなり低くなるものであり、勝率5割を超えるというのは異常事態と言えるだろう。これはパ・リーグにおいても同様で、先制された試合が多いほどリーグ順位(右端)も悪くなる傾向がある。

球団 勝率 順位
楽天 29 12 16 1 .429 1位
西武 40 15 25 0 .375 3位
オリックス 44 15 29 0 .341 4位
ソフトバンク 33 10 23 0 .303 2位
日本ハム 43 10 33 0 .233 5位
ロッテ 51 9 41 1 .180 6位

※2017年7月12日時点の先制された試合の勝率

そもそも「先制される」ということは、先発投手の調子が良くないか、相手打線の調子が良い可能性が高く、その後も苦しい展開になりやすい。また、負けている状況では先発投手に代打を出さなければいけないケースも多く、そこで勝ち越せ無かった場合には”勝ちパターン”と呼ばれる優秀な中継ぎではなく、どうしても4番手、5番手の投手を投入せざるを得ない。

こうして考えていくと、先制された試合で勝率が低くなるのは「当たり前」なのである。

その「当たり前」を大きく覆しているのが今の広島であり、先制された試合数がリーグ最多であるにもかかわらず、首位を独走しているというのだから恐ろしい話だ。これだけ逆転勝ちが見られるとなると、ファンとしても楽しくて仕方がないだろう。

逆転の秘訣は「中盤以降の打線」と「投手陣の粘り」

広島の逆転勝ちの多さにはもちろん理由がある。簡単に言ってしまえば「打線が強い」ということなのだが、ここでは前半戦の得点・失点をイニング別にまとめたグラフを見てみたいと思う。

広島東洋カープの2017年前半戦の得点と失点の回別分布

グラフを見ると、5回以降で得点がグンと増えているのがわかる。これは打順が2巡目、3巡目となる中盤から終盤にかけて、相手先発をきっちり攻略できていることの表れだろう。また終盤に出てくる中継ぎのうち、誰か一人でも調子が悪ければ、それに乗じて集中打を浴びせる爆発力も備えていると言える。

逆に失点は初回が最も多く、2回で一端落ち着いて、5回以降は減少しているのがわかる。序盤で失点するケースが多いものの、その後は先発や交代した中継ぎがしっかり粘れており、打線の反撃を待てるといったところだろうか。

このように「逆転の広島」を支えているのは、序盤打てなくても中盤以降にきっちり相手投手を攻略する打線の力と、先制点はあげてしまうものの、その後きっちり粘れる投手陣のおかげと言えるだろう。

ちなみに広島と対照的なグラフを描いているのが現在5位の中日ドラゴンズだ。先制された試合は31試合とリーグ最少だが、逆転負けが26回で12球団最多となっている。(2番目に多いのがヤクルト、日本ハム、ロッテの21回)

中日ドラゴンズの2017年前半戦の得点と失点の回別分布

グラフを見れば一目瞭然だが、得点は初回が最も多く、回を追うごとに少なくなるのに対し、失点は初回が最も少なく、5回・6回で一気に増えており、まさに「被逆転の中日」を表す結果になってしまっている。

「逆転の広島」に見る課題

現状、広島の強さに疑問を挟む余地はないが、それでもやはり「先制された試合が多い」というのは課題として捉えた方が良いだろう。

今は打線の力と投手陣の粘りのおかげで何とかなっているものの、普通に考えれば先制された試合の勝率が低くなるのは間違いないので、何とか先制点を許さないように先発陣が踏ん張る必要がある。

実際、ジョンソン、中崎不在の5月には投手陣が粘れずに苦しむ時期もあったし、昨年の日本シリーズでは先制された2試合でどちらも負けている。

逆転劇を演出するためにわざと先制されているなら話は別だが、日本一を目指すのであれば「逆転の広島」に浮かれることなく、順当に抑えて勝つパターンを増やしていく必要があるだろう。そうなれば向かうところ敵無しだ。

付録データ:被先制試合の勝率(2016-2017)

おまけとして、12球団の2016年、2017年の先制された試合の勝率を掲載する(勝率順)。広島が2年連続で唯一の勝率5割超えを誇っており、恐るべき逆転力を発揮していることがわかる。

2016年の先制された試合の勝率

球団 勝率
広島 64 34 29 1 .540
日本ハム 63 28 33 2 .459
ソフトバンク 56 23 31 2 .426
西武 73 27 44 2 .380
ロッテ 74 26 46 2 .361
横浜 73 23 47 3 .329
巨人 56 17 39 0 .304
楽天 87 26 61 0 .299
ヤクルト 80 23 56 1 .291
阪神 75 20 54 1 .270
中日 79 19 59 1 .244
オリックス 77 16 59 2 .213

2017年の先制された試合の勝率

球団 勝率
広島 66 32 30 4 .516
西武 67 24 42 1 .364
阪神 67 23 43 1 .348
ソフトバンク 61 21 40 0 .344
楽天 69 23 44 2 .343
オリックス 74 22 52 0 .297
巨人 81 22 57 2 .278
横浜 63 16 45 2 .262
日本ハム 77 20 57 0 .260
中日 63 15 46 2 .246
ヤクルト 89 17 71 1 .193
ロッテ 81 15 65 1 .188