【WBC】2017年WBC第4回大会を振り返る/結果&成績まとめ

2017WBC優勝はアメリカ

2017WBCはアメリカの初優勝をもって幕を閉じた。3月6日の開幕戦から3月23日の決勝戦まで、実に18日間にも及ぶ激闘であった。

日本代表(侍ジャパン)は惜しくも準決勝でアメリカに敗れてしまったが、1番から9番までメジャーリーガーがずらりと並ぶ打線をわずか2点に抑えるなど、日本の誇る投手力を世界に知らしめたことは間違いないだろう。

ここでは侍ジャパンの試合結果や選手成績に触れながら、2017年WBC第4回大会について振り返っていきたい。

日本代表の試合結果

2017WBCにおける日本代表の試合結果は以下の通り。

ラウンド 日付 対戦国 勝敗 スコア 場所
1次 3月7日 キューバ 11-6 東京ドーム
3月8日 オーストラリア 4-1
3月10日 中国 7-1
2次 3月12日 オランダ 8-6 東京ドーム
3月14日 キューバ 8-5
3月15日 イスラエル 8-3
準決勝 3月22日 アメリカ 1-2 ドジャースタジアム

出典:日程&開催地 – 2017WBC公式

日本代表はリーグ戦の1次ラウンド、2次ラウンドともに全勝で勝ち進んだが、準決勝ではアメリカに1-2で惜しくも敗れてしまった。決勝戦でアメリカがプエルトリコを8-0で下したことを考えると、日本は負けたとは言えかなり善戦したと言えるだろう。

今大会は準決勝のアメリカ戦を除けば大量得点した試合が多く、打撃戦による盛り上がりもあって視聴率は軒並み20%以上を記録した。中でも2次ラウンド初戦のオランダ戦では球史に残る死闘を繰り広げている。

準決勝ではアメリカ投手陣の前に打線が完璧に封じ込まれてしまったが、日本も負けじとアメリカ打線を抑え込んでおり、非常にレベルの高い投手戦も見ることができた。

惜しくも優勝は逃したが、決勝で8-0という圧倒的な強さを見せたアメリカと接戦を演じられたことは誇って良いだろう。次のWBCでは何としてもリベンジを果たしてもらいたいところだ。

なお前回優勝国のドミニカ共和国は、2次ラウンドでアメリカとプエルトリコに負けて敗退している。メジャーの超一流が揃ったスター軍団の敗退には驚いたが、これも年々大会のレベルが上がってきている証拠だろう。

侍ジャパンの打撃成績

2017WBCにおける侍ジャパンの打撃成績(OPS順)は以下の通り。

2017WBC日本代表の打撃成績

出典:2017WBC公式

1次ラウンド、2次ラウンドで打ちまくったこともあり、4番筒香を筆頭にOPS1.000超えが6人と、打撃成績の見栄えはかなり良くなっている。チーム全体で見ても、打率.298、出塁率.384、OPS.875は十分及第点と言えるだろう。

ただし準決勝のアメリカ戦に限ってみると、打率.143(28-4)、出塁率.250(32-8)とかなり寂しい結果に終わっている。アメリカの投手リレーが強力だったのは間違いないが、それにしてもツーシームやハードシンカーといった「動く速球」を打てなかったのは致命的であった。

次の大会で優勝を目指すには「動く速球」の攻略が不可欠となってくるが、アメリカ戦に代打で出場してヒットを放った内川の打撃にヒントが隠されているように思う。

青木宣親の評価

今大会、侍ジャパン唯一のメジャーリーガーとして参加してくれた青木だが、その成績については是非が分かれるところだ。

最終成績を見ると打率.182と低いものの、出塁率.379はチーム7位であり、アメリカ戦でも2出塁1進塁打とチャンスメイクによる貢献度は高い。

しかし、得点圏打率はチーム最下位で、出場試合すべてで3番を打ったことを考えると、物足りなく感じてしまうのは仕方がないだろう。

【得点圏打率ワースト3】

  1. 青木宣親 .100(10-1)
  2. 山田哲人 .125(8-1)
  3. 鈴木誠也 .200(5-1)

ただ、代わりを期待していた秋山の骨折が大会後に判明したこともあり、結果的に青木がいてくれて良かった面の方が大きかったと言える。打順は変えても良かったかもしれないが、下手にいじって他が悪くなるのも怖いので難しいところだ。

小林誠司の大ブレイク

今大会で最もブレイクした選手と言えば、捕手の小林誠司で間違いないだろう。

WBC直前まで第3捕手としてしか期待されていなかったが、直前の強化試合の結果を受けて急きょスタメンに抜擢。初戦キューバ戦でのバント失敗からのヒットを皮切りに、シーズンでは想像できないほどの神懸った打撃成績を叩き出した。

2017WBC
7試合 .450 1本 6打点 OPS1.055

これは歴代の侍ジャパン正捕手と比べてもトップクラスの成績であり、メジャーを代表する捕手モリーナ(プエルトリコ)とのベストナイン論争が巻き起こるほどであった。

WBC歴代正捕手
里崎(2006):*8試合 .409 1本 5点
城島(2009):*9試合 .333 1本 4点
阿部(2013):11試合 .241 2本 7点
小林(2017):*7試合 .450 1本 6点

大会前にこれほどの成績を残すと予想できた人は誰ひとり居ないであろう。ペナントが始まったら、また昨年までの小林に戻りそうだが、それでも今年の覚醒を密かに期待してしまうのが正直なところだ。

侍ジャパンの投手成績

2017WBCにおける侍ジャパンの投手成績(防御率順)は以下の通り。

2017WBC日本代表の投手成績

出典:2017WBC公式

全体的に先発陣の失点が目立ち、中継ぎはよく抑えていた印象だ。ただ試合数を見てもらえばわかるように、投手の起用にはかなり偏りがあった。

平野、秋吉、牧田といった中継ぎ陣がフル回転だったのに対し、武田や藤浪は消化試合の中国戦にしか登板しないなど、その負担には大きな差がついた。最終成績だけを見ると活躍度合いがわかりにくいが、明らかに菅野、千賀、平野、秋吉、牧田に期待する向きが強かっただろう。

今回思うような活躍ができなかった投手については、次回大会でその鬱憤を晴らして欲しいと思う。特に藤浪は制球やフィールディングを改善できれば、2021WBCの目玉となれる可能性を秘めている。

菅野智之のアメリカ戦での投球

1次ラウンドから先発陣が打ち込まれており、アメリカ戦の先発はどうするかという議論が起こっていたが、それを黙らせたのが菅野のピッチングであった。

フォーシームとスライダーを軸にアメリカ打線を6回3安打に抑え込み、許した失点もエラー絡みの1点のみ(自責0)。4番アレナドから3打席連続三振を奪うなど、要所を三振とゴロで締め、エースらしい投球を見せつけた。

相変わらず援護はなかったものの、アメリカ代表監督から賛辞を受けるなど、侍ジャパン投手陣の面目躍如を果たした。

米国監督、菅野は「メジャー級の投手」試合後には日本投手陣の外角速球コントロールを評価
WBC準決勝(日本1-2米国、21日、ロサンゼルス)米国のリーランド監督が日本の投手陣をたたえた。投手を見る目に定評がある。試合前から先発の菅野(巨人)について「メジャー級の投手だ」と語っていた。
引用元:SANSPO.COM

千賀滉大が大会ベストナイン

今大会、侍ジャパンで唯一ベストナインに選ばれたのが千賀滉大だ。

150km中盤のフォーシームと落差の大きいフォークを武器に、チームトップタイの16奪三振を記録した。圧巻だったのは準決勝アメリカ戦での三者連続三振。メジャーの強打者が手も足も出ず、ベストナイン選出の決め手にもなった。

千賀は大会通じて先発・中継と大車輪の活躍を見せ、4試合11イニングを投げて防御率0.82という最も安定した成績を残した。準決勝だけでなく、オランダ戦やイスラエル戦といった重要な試合を無失点に抑えたこともポイントが高いだろう。

2017WBCの総括

日本代表の試合を振り返ると、1次ラウンド・2次ラウンドは打線様様、準決勝は菅野&千賀様様で、打者と投手の活躍がバランスよく見られたように思う。オランダ戦を筆頭に盛り上がる試合も多く、野球ファンであってもなくても楽しめる大会だったのではないだろうか。

また日本代表の試合以外にも名勝負が多く、イスラエルを筆頭としてそれほど強豪と思われていなかった国の躍進も目立った。

WBC開催の目的のひとつに「野球を世界に普及する」というものがあるが、その点で今大会が果たした役割は大きかったように思う。

本気を出したアメリカの初優勝

そして何と言っても今大会で注目すべきは、野球の母国アメリカの初優勝だろう。第1回大会からメジャーリーガーを揃えていながら、半ばキャンプ気分での参加も多く、思うように結果が出ていなかったアメリカがついに本気を出したのだ。

アメリカ代表の編成を担当したトーリGMとリーランド監督は、代表選出の際にひとりずつ面談を行い、国のために戦える選手だけを選んだとのこと。その思いが結実したのが1次ラウンド、コロンビア戦での4番アレナドのヘッドスライディングだろう。

二年連続ナ・リーグ二冠王(本塁打・打点)のアレナドが、振り逃げから決死のヘッドスライディングを試みたのだ。普通では考えられないプレーだが、これが決め手となってこの試合で勝利を収めている。今大会にかけるアメリカの本気度が窺い知れる場面であった。

結局そのままの勢いで優勝まで突き進むのだが、大会後に出た下記記事でもアメリカ代表が自己犠牲のもとに一致団結した様が見て取れる。

米国、スター軍団が自己犠牲と絆で掴んだ初V「オレ、オレ、オレではない」
準決勝で侍ジャパンを破って初の決勝進出を果たした米国にとっては待望の世界一となったが、悲願達成の裏には、チームUSAのスターがエゴを捨てて今大会中に育んだ絆があったという。地元紙「USAトゥデー」が選手たちの数々の証言をもとに報じている。(全文は引用元を参照)
引用元:Full Count

本気を出したアメリカを筆頭に、ドミニカ、プエルトリコ、オランダと強力なライバルは増え続け、大会の格は年々上がっているように思う。次回以降さらに厳しい戦いを強いられるだろうが、それでも侍ジャパンの世界一奪還を夢見て2021WBCを心待ちにしたいと思う。