プロ野球「リクエスト制度」のルールと今後の課題

プロ野球のリクエスト制度のルールと課題

2018年から日本プロ野球(NPB)で導入された「リクエスト制度」は、審判の判定に異議がある場合に、ビデオ映像によるリプレー検証を求めることができる制度である。

メジャーで2014年から導入されている「チャレンジ制度」を模したものであり、これまでホームランおよび本塁クロスプレーのみに適用されていたビデオ判定が、より広範囲のプレーに適用されるようになった。

ここでは、リクエスト制度のルールを今一度おさらいするとともに、リクエスト制度導入後に見えた問題点などを挙げながら、今後の課題について述べていきたい。

リクエスト制度のルール

基本ルール

  1. リクエストは1試合で2回まで可能。(延長戦ではリセットされて1回まで可能)
  2. 判定が覆った場合、リクエスト回数は減らない。
  3. リプレー検証時間は5分以内とし、確証が得られない場合は最初の判定通りとする。

リクエスト適用外のプレー

  1. ストライク、ボールの判定
  2. ハーフスイング
  3. 自打球
  4. 走塁妨害、守備妨害
  5. ボーク
  6. インフィールドフライ
  7. 塁審より前方の打球

リクエスト適用外のプレーに対しては、例え判定に異議があっても検証を要求できないため、こうしたプレーに絡んで揉めるシーンが何度か見られた。

次項ではリクエスト制度の導入後に起きたトラブルについて、いくつか例を挙げながら説明していきたい。

導入後に起きたトラブル事例

リプレー検証後のホームラン誤審

リクエスト制度下で起きたトラブルの中で最も大きいものが、2018年6月22日のオリックスvsソフトバンク戦でのホームラン誤審だろう。

同点で迎えた延長10回表に、ソフトバンク・中村晃が打ったポール際の打球がファールと判定され、これにソフトバンクの工藤監督がリクエストを要求。リプレー検証の結果、ホームランへと判定が覆り、これが決勝点となってソフトバンクが試合に勝利した。

ところが試合後、判定に納得のいかないオリックス・福良監督が、審判団を連れ立って再度ビデオを確認し、その結果、審判団が「ファールだった」と誤審を認めた。

映像が不鮮明だったことに加え、審判団がビデオの操作に不慣れだったために起きたようだが、リプレー検証の末の誤審とあって大きな問題となった。

塁審より前方の打球に関する事例

シーズン中によくあったのが、塁審より前方の打球に関するトラブルだ。

2018年8月19日の楽天vsロッテ戦で、3回裏に楽天・今江が一邪飛を打ったように見えたが、打った後でワンバウンドしたとしてファールと判定された。これに納得のいかないロッテ・井口監督が抗議するも、塁審より前方の打球ということでリクエストは認められなかった。

2018年8月15日のヤクルトvs巨人戦では、巨人・吉川光がピッチャーライナーをノーバウンドで捕球したように見えたが、ワンバウンド捕球との判定。巨人・高橋監督の抗議も虚しく、塁審より前方の打球ということでリクエストは認められなかった。

この他にも、リプレー検証をしていれば判定が覆っただろうプレーがいくつか見られたが、「塁審より前方の打球」ということでリクエストが認められることは無かった。

ハーフスイングに関する事例

ハーフスイングに関するプレーでも、何度かトラブルが起きている。

2018年5月3日のヤクルトvs中日戦で、中日・亀澤が左膝に死球を受けた。ただ死球の際に亀澤がスイングしているように見えたため、ヤクルト側がリクエストを要求。しかしハーフスイングはリクエスト対象外のため、死球へのリクエスト扱いとなり判定は変わらず、球場がざわつく場面が見られた。

2018年9月14日の横浜vs巨人戦でも全く同様のことが起きており、巨人・岡本に対する死球判定に対して、横浜側がリクエスト要求したものの判定は変わらず。これに対して、ハーフスイングだと抗議した横浜・パットンが退場する事態となっている。

上記のケースでは、ハーフスイングがリクエスト対象外のため、リプレー検証はいずれも「死球かどうか(ボールが打者に当たったかどうか)」に対して行われている。基本的に審判が「ハーフスイングでない」と判定した時点で、リクエストでそれを覆すことはできないのだ。

ちなみにハーフスイングには「ここまで振ったらスイング」といった明確な基準はなく、打者に打つ意思があったかどうかを審判が判断して決めている。「死球が無ければ振らなかった」と審判が判断すればハーフスイングにならないので、リクエストできても判定が覆るかは微妙なところだ。

ただ、こうした周知を徹底していれば、球場の混乱はもう少し抑えられたように思う。

リクエスト制度の今後の課題

こうしたトラブル事例も含めて、リクエスト制度の直近の課題を挙げると以下の3つになる。

  1. 映像機器の整備
  2. リクエスト適用範囲の拡大
  3. ルール周知の徹底

① 映像機器の整備

前述したホームラン誤審の他にも、映像が不鮮明だったり角度が悪かったりしたために判定しづらい場面というのは多くあった。またそのせいで判定に時間がかかってしまい、試合時間が間延びしてしまうという問題もある。

お金の問題もあるので、メジャーリーグばりに何十台もカメラを設置して、リプレー検証専門の部署を設置しろとまでは言わないが、ポール際など特にリプレー検証の多い箇所について、映像機器を整備していけたら良いかと思う。

② リクエスト適用範囲の拡大

こちらはお金のかかる話ではないので、来季からでも始めてほしいのだが、とりあえず「塁審より前方の打球」に関しては、リクエスト適用OKにしたほうが良いのではないかと思う。

塁審より前方だろうと見づらいプレーは存在するので、そこを除外する必要は無いように思う。実際、疑問の残る判定はあったし、審判に対して「前方の打球くらい見えなくてどうする」とも思わないので、そこらへんは柔軟に対応してほしい。

その他の項目については、試合時間が異様に延びる可能性や、そもそも判定基準が明確に定まっていないものも多いので、安易に拡大するのは難しいだろう。

③ルール周知の徹底

リクエスト制度については事前の周知が徹底されておらず、特に適用範囲外のプレーについて、観客が戸惑ったり、そもそも審判自身が勘違いしたりするような場面も見受けられた。

リクエスト制度のスムーズな行使のためにも、きちんとしたルールをNPB公式ページに掲載したうえで、報道紙面や各種SNSなどで周知を徹底していってほしいと思う。

また一塁のセーフアウトなど簡単なものは良いが、ややこしい判定については、リプレー検証の結果どういった理由でそうなったかを審判が説明しても良いように思う。

リクエスト制度の成功率(2018)

最後に2018年のリクエスト制度の成功率を紹介しておきたい。

858試合でリクエスト制度が用いられた回数は494件(セ251件、パ243件)。うち判定が変更されたケースは162件で、リクエスト成功率は32・8%となった。(引用:スポーツ報知

これまではスロー映像を見た後で判定にモヤモヤすることも多かったが、それが大幅に減っただけでも、選手や観客のフラストレーションは抑えられたはずだ。また審判にとっても、人の目では判断の難しいプレーについて、その負担が軽減されることで助かる部分も大きいと思う。

ちなみにリクエスト成功率は誤審率ではないので、この数字をもって審判を叩くような行為は避けるべきだろう。審判の判定を補助する制度として、ファンの理解も必要になってくる。

リクエスト制度についてはまだ課題があるものの、すべて完璧にしてからだと何も始められないので、ひとまず制度を導入できたことは大きな前進と言えるだろう。これから少しずつ改善していき、制度をより良い方向へ進めていってほしいと思う。