西武ライオンズで4番を張る「おかわりくん」こと中村剛也選手。
今年(2017年)で16年目になる右の大砲だが、怪我に苦しむことも多く、規定打席に到達したのはわずかに6度のみ。そのせいもあってか地味な選手に思われがちだが、その6度すべてで本塁打王を獲得するなど、長打力は歴代のレジェンドに匹敵する。
ここではそんな中村剛也の天才的なホームランアーティストっぷりを紹介していきたい。
歴代3位となる6度の本塁打王
中村は過去に6度も本塁打王のタイトルを獲得しており、これは王貞治、野村克也に次いで歴代3位の獲得回数となっている。
選手名(最終所属) | 獲得回数 | |
---|---|---|
1 | 王貞治(巨人) | 15回 |
2 | 野村克也(西武) | 9回 |
3 | 中村剛也(西武) | 6回 |
4 | 青田昇(阪急) | 5回 |
4 | 中西太(西鉄) | 5回 |
4 | 落合博満(日本ハム) | 5回 |
7 | 山本浩二(広島) | 4回 |
7 | T.ローズ(オリックス) | 4回 |
これだけでも十分凄いことだが、中村の恐ろしいところはその獲得率だ。
2002年に西武入団後、2016年までで規定打席(試合数×3.1)に到達したシーズンは6回しかないが、その6回すべてで本塁打王を獲得している。
年度 | 球団 | 試合 | 打席 | 打率 | 本塁 | 打点 | OPS |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2003 | 西武 | 4 | 14 | .167 | 0 | 2 | .536 |
2004 | 西武 | 28 | 37 | .273 | 2 | 5 | .836 |
2005 | 西武 | 80 | 259 | .262 | 22 | 57 | .923 |
2006 | 西武 | 100 | 323 | .276 | 9 | 29 | .787 |
2007 | 西武 | 98 | 267 | .230 | 7 | 32 | .710 |
2008 | 西武 | 143 | 590 | .244 | 46 | 101 | .889 |
2009 | 西武 | 128 | 562 | .285 | 48 | 122 | 1.010 |
2010 | 西武 | 85 | 354 | .234 | 25 | 57 | .872 |
2011 | 西武 | 144 | 622 | .269 | 48 | 116 | .973 |
2012 | 西武 | 123 | 498 | .231 | 27 | 79 | .792 |
2013 | 西武 | 26 | 114 | .208 | 4 | 15 | .670 |
2014 | 西武 | 111 | 466 | .257 | 34 | 90 | .963 |
2015 | 西武 | 139 | 599 | .278 | 37 | 124 | .926 |
2016 | 西武 | 103 | 432 | .238 | 21 | 61 | .760 |
- 2002年は一軍出場なし
- 赤背景:規定到達 赤字:タイトル獲得
体調万全でシーズン通して試合に出られれば、百発百中で本塁打王を取れてしまうというのだから恐ろしい。まさに「ホームランアーティスト」と呼ぶに相応しい怪物なのだが、特筆すべきは2011年、2012年のいわゆる違反球時代に、2年連続で本塁打王を獲得している点だ。
この2年間は反発係数の異様に低いボールが使用されたため、球界全体で本塁打数が激減。パワーヒッターと呼ばれた打者が軒並みホームランを打てなくなり、引退に追い込まれていった悪夢の時代である。
そんな時代にありながら、中村が変わらずにホームランを打ち続けられたのには、彼の打撃論が深く関係している。
中村剛也の打撃論
「7割の力でもスタンドへ運ぶことができる」と豪語する中村の打撃の肝は、「腰の回転」と「バットの押し込み」にある。
腰の回転速度を上げることで、バッドのヘッドスピードも速くなり、結果的にボールに伝わる力が増す。また、インパクト直後にバットの先端を走らせることで、バットとボールの接触時間が長くなり、回転によるエネルギーを最大限ボールに伝えることができるというのだ。
見かけによらず、かなり理論的にバッティングを捉えており、パワーだけでない確かな技術に裏打ちされたホームランだと言える。これが、飛ばないボールで48本ものホームランを量産した秘訣であろう。
実際2011年の48本塁打という記録は、年度毎のホームランの出やすさを考慮した「本塁打傑出度(HR/LHR)」で見ると、あの王貞治や60本塁打を放った2013年のバレンティンを抑えて歴代2位に位置している。
選手 | 年度 | L | HR | LHR | HR/LHR | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 中西太 | 1953 | パ | 36 | 331 | 10.88% |
2 | 中村剛也 | 2011 | パ | 48 | 454 | 10.57% |
3 | 中西太 | 1955 | パ | 35 | 386 | 9.07% |
4 | 野村克也 | 1962 | パ | 44 | 518 | 8.49% |
5 | バレンティン | 2013 | セ | 60 | 714 | 8.40% |
6 | 大下弘 | 1951 | パ | 26 | 316 | 8.23% |
7 | 豊田泰光 | 1953 | パ | 27 | 331 | 8.16% |
8 | 別当薫 | 1950 | パ | 43 | 535 | 8.04% |
9 | 王貞治 | 1966 | セ | 48 | 598 | 8.03% |
10 | 中西太 | 1956 | パ | 29 | 365 | 7.95% |
- LHR:リーグ本塁打数(1リーグ7球団以上ある年は6球団に換算)
- HR/LHR:本塁打傑出度(本塁打をリーグ本塁打で割ったもの)
ホームランを打つ事に関しては、今の日本球界に中村の右に出るものはおらず、まさに究極のホームランバッターと言えるだろう。
2017年も本塁打王なるか?
もはやホームランを打つマシーンと化している中村だが、今シーズンもこのままいけば規定打席に到達するのは間違いないだろう。問題は7度目の本塁打王となるかだが、7月8日現在では18本塁打で同率3位につけている。
▼2017年7月8日時点
選手 | 球団 | 本塁打 | |
---|---|---|---|
1 | 柳田悠岐 | 福岡 | 22本 |
2 | デスパイネ | 福岡 | 20本 |
3 | ウィーラー | 楽天 | 18本 |
3 | ペゲーロ | 楽天 | 18本 |
3 | 中村剛也 | 西武 | 18本 |
3 | T-岡田 | オリックス | 18本 |
3 | レアード | 日本ハム | 18本 |
ソフトバンクの柳田がかなりのペースでホームランを量産しているが、まだ十分射程圏内にいるので、「規定到達=本塁打王」の伝説続行を楽しみに待ちたいと思う。
2017年10月追記
2017年のパ・リーグ本塁打王はデスパイネ(37本)が獲得した。中村は486打席で27本と、残念ながら規定到達して初めて本塁打王を逃してしまった。8月に腰の張りで1ヵ月弱離脱した影響が大きかったか。