【巨人】吉川光夫の全盛期(2012年)と現在(2017年)の比較

巨人にトレード移籍した吉川光夫
本記事に載っているデータは全て2017年5月23日時点のものです。

2016年オフシーズンに大田泰示&公文克彦とのトレードで、石川慎吾とともに日本ハムから巨人に移籍してきた吉川光夫選手。

移籍後初登板となった4月6日のDeNA戦では、6回を投げて4安打1四球2失点と、勝ち星は付かなかったものの先発としての役割を果たした。ところが2度目の登板となった4月13日の広島戦では、1回1/3を投げて7安打2四球4失点と打ち込まれ、早々にノックアウトされてしまう。

その後4月17日に一軍登録を抹消され、しばらく2軍での調整が続いたが、いよいよ今日5月24日の阪神戦にて一軍復帰が決まった。不安7割、期待3割という心持ちだが、まだ29歳ということもあり、なんとかもう一花咲かせて欲しいというのが心情だ。

ここでは現在の吉川について、全盛期(2012年)からの変化を分析するとともに、今年活躍できるかどうかを論じてみたい。

過去の成績一覧

まず、これまでの吉川の年度別成績を以下に示す。

年度 球団 投球回 防御率 四球 三振
2007 日本ハム 19 4 3 0 93.1 3.66 46 52
2008 日本ハム 7 2 4 0 34.2 6.23 22 23
2009 日本ハム 3 0 2 0 16.1 6.61 10 18
2010 日本ハム 9 0 4 0 26 6.92 11 20
2011 日本ハム 7 0 5 0 38 4.74 20 25
2012 日本ハム 25 14 5 0 173.2 1.71 45 158
2013 日本ハム 26 7 15 0 160.1 3.31 57 125
2014 日本ハム 13 3 4 0 72 4.88 36 49
2015 日本ハム 26 11 8 0 159.1 3.84 57 93
2016 日本ハム 27 7 6 3 109.2 4.19 52 65
2017 巨 人 2 0 0 0 7.1 6.14 2 6

出典:個人年度別成績 – NPB

過去10年で規定投球回(試合数×1回)に達したのは2012年、2013年、2015年の3度のみ。巨人ファンとしては2012年に日本シリーズで対戦した記憶が強いと思うが、この年が吉川の全盛期で間違いないだろう。

2012年は紛れもないエース投手であり、日本ハムのリーグ優勝に大きく貢献したが、翌年は7勝15敗と大きく負け越している。ちょうど2012年が違反球を使用していた年だったため、「違反球専用投手」という不名誉なレッテルまで張られてしまった。

2015年に一度復活して3年ぶりの2桁勝利をあげたものの、2016年は8月以降に不調で二軍落ちし、チームが日本一に輝く中で戦力になることはできなかった。

速球派から軟投派へ

吉川は左投げのオーバースローで、球種はストレート、スライダー、カーブ、シュート、フォーク、チェンジアップを投げ分ける。全盛期は最速152kmのストレートを主体とし、力で押していくピッチングを持ち味にしていた。

しかし、次第にストレートの球威は衰えてきており、2012年には平均144km、最速152kmを記録した球速も、2017年には平均141km、最速149kmまで落ちてきている。

年度 平均球速 最高球速
2012 144 km/h 152 km/h
2015 143 km/h 151 km/h
2017 141 km/h 149 km/h

出典:ピッチャーの球種の投球割合

これに伴い、2012年には53%だったストレート割合が、2015年には45%、2017年には37%と年々減少しており、もはや全盛期とは全く異なる投球スタイルと言ってよいだろう。

2012年の吉川光夫の投球割合
2015年の吉川光夫の投球割合
2017年の吉川光夫の投球割合

出典:データで楽しむプロ野球

左腕でMAX149kmならまだ十分に速い方だと思うが、それでも以前のようなパワーピッチングは出来なくなりつつある。ストレートの威力が落ちた分、変化球の質が上がったようにも見えないので、成績の悪化は致し方ないことかもしれない。

コントロールに改善の兆し

ストレートの球威が落ちている一方で、コントロールには改善がみられる。

BB/9(与四球率)を見ると、全盛期の2012年は2.33(リーグ平均2.67)だったものが、2015年には3.22(リーグ平均3.23)と悪化したが、今年に限っては2.45(リーグ平均3.28)と全盛期並みの水準に戻している。

年度 BB/9 リーグ平均
2012 2.33 2.67
2015 3.22 3.23
2017 2.45 3.28

もともと制球難で四死球から崩れるタイプなだけに、この改善は大きなポイントになるだろう。球威が落ちたとはいえ左腕としてはそれなりの球速を保っているため、現在の制球力を保つことができれば、ある程度の活躍は期待できるはずだ。

正直まだ登板数が少なくデータとしてはあまりに心許ないが、こうして規定投球回に達した2012年、2015年と比較することは、現状を判断するための材料にはなってくるだろう。

まとめ

ここまでをまとめると、「ストレートの球威は落ちており、投球内容も変化球主体に変わりつつあるが、コントロールについては改善の兆しが見える」といった感じだろうか。

まだ試合をそれほど見ていないのでハッキリとしたことは言えないが、左腕であることを加味すれば、今後も先発ローテの一員として活躍する可能性は十分にあるだろう。

現状、吉川の被BABIP(内外野に飛んだ打球のヒット確率)は.407で、リーグ平均.302に比べてかなり高くなっているため、今後揺り戻しがくれば今よりも失点は抑えられるはずだ。

指標的にも色々と好材料は揃っているので、とりあえず今日の阪神戦で制球が定まることに期待したい。

5月24日:阪神戦後の追記

3度目の登板となった阪神戦では、ストレートのキレが良く、課題の制球も定まっており、4回1/3を投げて1安打無四球無失点と好投していた。ところが5回、鳥谷に対して頭部死球を投げてしまい、まさかの危険球退場となってしまった。

死球をぶつけたことでインコースを攻められなくなり、そのまま投手人生が終わってしまう選手もいるだけに、不安の残る登板結果となってしまった。復活の兆しが見えていただけに残念ではあるが、今後も活躍するようであれば、またシーズン終了後に総括記事を書きたいと思う。