【野球】25年ぶり広島東洋カープ優勝の軌跡!全143試合のターニングポイントに迫る

広島東洋カープ

2016年のシーズンは、25年ぶりの広島東洋カープ優勝という歴史的快挙とともに幕を閉じた。

「混セ、混セ」と騒いでいたものの、終わってみれば2位に17.5ゲーム差という大差をつけての優勝。昨年の横浜の件(前半戦首位からの最下位)もあり、半信半疑に見られていた広島の優勝も、シーズン中盤を過ぎたあたりからは確信へと変わっていった。終盤戦に入る頃には、もはや自チームのタイトル争いにしか興味が無くなってしまった他球団ファンも多かっただろう。

首位を走り続けた広島の独擅場シーズンであったが、年間を振り返ってみるといくつかのターニングポイントがあったことに気付く。「あそこでああなっていたら…」と思うことはたくさんあると思うが、タラレバを語りだすとキリが無い。ここはひとつ、広島東洋カープの優勝を祝福しつつ、優勝に至るまでの軌跡を辿っていきたい。

混戦のセ・リーグ

高橋由伸監督が巨人の新人監督としては35年ぶりとなる開幕4連勝を飾り、「巨人のV確率90%」などいう新聞見出しと共に始まった2016年のシーズン。ソフトバンクの独走でゲーム差の開いたパ・リーグに対し、首位になると負けるという謎の法則によりセ・リーグの混戦状態は続いた。(※5月30日の時点でソフトバンクが貯金19、2位とのゲーム差は6であった。)

下の図はセ・リーグの貯金数(勝数-負数)の推移を表したものである。シーズン序盤は各チームの貯金数にそれほど差がなく、団子状態になっているのがわかる。戦力は拮抗しており、あとは交流戦をいかに乗り切るかだ…と思っていたところで、首位巨人が7連敗を喫する。

2016年の貯金数の推移(5月28日時点)

この時の広島と巨人の勝敗表がこちら。

5月21日(土)~5月28日(土)
広島:●○○○○●●
巨人:●●●●●●●

巨人の7連敗で広島とのゲーム差は一気に3.5へと広がり、混セに暗雲が立ち込めてきたところで交流戦へ突入することとなった。

最後の首位陥落

巨人の大型連敗により首位に立った広島。このまま独走態勢に入るかと思われたが、そうは問屋がおろさない。翌日から巨人が6連勝したのだ。

5月29日(日)~6月4日(土)
広島:○●○●●
巨人:○○○○○○

交流戦直前の連敗で広がったゲーム差があっという間に縮まり、6月4日(土)の時点で巨人が勝率で上回った(勝率:巨人.538、広島.535)。ここからまた混セの始まりかと思われたが、まさかこれが広島にとって最後の首位陥落になろうとは誰も想像していなかったであろう。

2016年の貯金数の推移(6月4日時点)

鈴木誠也の3試合連続ホームラン

前半戦の大きなターニングポイントは交流戦でやってきた。広島が交流戦最後の相手であるオリックスに対し劇的な3連勝を決めたのだ。その主役となったのが「神ってる」のフレーズで一躍有名となった鈴木誠也である。

第1戦:6月17日(金)@マツダスタジアム

8回表終了時点でオ4-0広とオリックスリードの展開。「今日は勝ったな」とオリックスファンが思った矢先、8回、9回で2点ずつ取られてまさかの同点とされる。そのまま延長戦に突入し、12回裏ノーアウト2塁の場面で鈴木誠也にサヨナラ2ランホームランを打たれ、サヨナラ負けを喫してしまう。

第2戦:6月18日(土)@マツダスタジアム

前日はよもやのサヨナラ負けとなったオリックスだが、この日は9回表を終えてオ3-1広と2点のリード。9回裏は満を持して守護神の平野をマウンドに送り出した。「さすがに今日は大丈夫だろう」と思っていたが、平野が1アウト1,3塁のピンチを招くと、鈴木誠也に逆転サヨナラ3ランホームランを打たれ、またしてもサヨナラ負けを喫してしまう。

第3戦:6月19日(日)@マツダスタジアム

まさかの2試合連続サヨナラ負けを喫したオリックスが、「今日こそは」と意気込んで臨んだ第3戦。2点リードの6回裏に、またしても鈴木誠也に同点2ランホームランを打たれ、そのままの勢いで逆転を許して3連敗を喫してしまう。

オリックスにとっては悪夢のような3連戦となったが、この戦いで鈴木誠也は一躍時の人となり、広島が完全に勢いづいてしまった。今年の広島の躍進に鈴木誠也が不可欠だったことを考えると、この3連戦にオリックスが3連敗した時点で、セ・リーグの命運は決まっていたのかもしれない。

巨人が4.5ゲーム差まで再接近

7月に2位巨人とのゲーム差が最大11ゲームまで開き、広島の優勝に確かな現実味が帯びてきたころ、「リメークドラマ」という言葉が囁かれだす。これは1996年のシーズンに起きた大逆転劇「メークドラマ」の再現という意味である。

メークドラマ
1996年に巨人が首位広島との最大11.5ゲーム差をひっくり返して優勝した大逆転劇。7月6日時点で11.5ゲーム差あったが、8月20日に巨人が首位に立つと、10月6日の対中日戦で巨人のリーグ優勝が決まった。

とはいえ、「そんな奇跡がそう何度も起こるわけない」と多くの人が思っていただろうし、それは巨人ファンであっても例外ではないだろう。

ところが、ここからまさかの巨人の快進撃が始まる。阿部慎之助が怪我から復帰したことで、前半戦が嘘のように点が取れるようになり、投手陣もベテランの内海、大竹が復帰して、谷間だらけのローテーションに安定感が出た。これにより、あれよあれよと白星を重ね、最大11ゲーム差あったものが8月6日には4.5ゲーム差まで縮んだのだ。

7月27日(水)~8月6日(土)
広島:●○●●○○●●●●
巨人:○●○○○○○-○○

ちなみに8月6日は広島vs巨人(3連戦)の2戦目。次の3戦目に勝てば、いよいよ3.5ゲーム差となり、巨人ファン以外は信じていなかった「リメークドラマ」が現実味を帯びてくる。そんな大事な3戦目だったのだが…。

2016年の貯金数の推移(8月6日時点)

天王山でサヨナラ勝ち

8月7日、天王山の3戦目。この日は激しい打撃戦で、9回表終了時点で巨7-6広というスコアであった。9回裏のマウンドに立ったのは巨人の守護神・澤村拓一。

澤村はランナーを出してピンチを招くことが多いので、この場面での登板には一抹の不安を覚えた人も多かったが、この日は珍しく順調に2アウトを取って打席には2番・菊池を迎えていた。

「今日は大丈夫そうかな?」そんな淡い期待を巨人ファンが抱いた矢先、菊池の打球は無常にもレフトスタンドへ。同点。しかし悪夢はこれだけでは終わらず、次の3番・丸に四球を出すと、4番・新井にサヨナラタイムリー二塁打を打たれて勝負あり。ゲーム差は5.5となった。

首位独走でリーグ優勝

それまでの快進撃が嘘だっかのように巨人は意気消沈し、あとはひたすらゲーム差が開いていくばかりであった。8月24日にマジック20が点灯すると、その後も広島は勝ち続け、9月10日の巨人戦にて広島東洋カープの25年ぶりのリーグ優勝が決定した。

2016年の貯金数の年間推移

最大のターニングポイントは?

終盤は完全に首位独走状態だった広島だが、それでも大きく2つのターニングポイントが存在した。ひとつはオリックス戦の鈴木誠也3連発、もうひとつは8月7日の天王山サヨナラ勝ちである。どちらも甲乙つけがたいほど、優勝を語るうえでは鍵を握る試合であった。

前年、広島のエース前田健太がドジャースへ移籍し、広島の戦力は低下すると思われた。しかし、野村や岡田、戸田といった若手ピッチャーが見事にその穴を埋め、投手陣の戦力低下は抑えられたように思う。とはいえ、戦力低下を抑えただけでは優勝はできない。プラスの要因が必要なのだ。そこで大きいのが鈴木誠也新井貴浩の存在である。

オリックス戦でのホームラン3連発でチームに勢いを付けた鈴木誠也、2位巨人との直接対決でトドメを指した新井貴浩、両選手とも昨年に比べて成績が大幅に向上しており、優勝への貢献度は計り知れないだろう。

選手 年度 試合 打率 HR 打点
鈴木誠也 2015 97 .275 5 25
2016 129 .335 29 95
新井貴浩 2015 123 .275 7 57
2016 132 .300 19 101

ただ、あえてどちらかを選べと言われれば、私は鈴木誠也の存在が最も大きかったと思う。

これは完全に私見になるが、25年も優勝できなかったチームが優勝するためには、ある種の勢いというか「イケるという雰囲気」が必要になってくる。今年のペナントレースを見ていて、広島東洋カープという球団の纏う空気が明らかに変わった瞬間がある。それがオリックス戦の鈴木誠也3連発だ。

あの瞬間、鈴木誠也は完全に勢いに乗ったし、球団もその勢いに引っ張られるように調子が上がっていったと思う。その後の広島はもう手に負えないといった感じで、結局そこから首位を譲ることなく優勝へ駆け抜けている。

そういう意味で、MVPは鈴木誠也、最大のターニングポイントはオリックス戦の3連発で間違いないだろう。あの瞬間、セ・リーグの命運は決していたのだ。

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