【野球】北海道日本ハムファイターズはなぜ特攻ドラフトを強行するのか

大谷翔平の入団表明会見

2016年のドラフト会議が10月20日に行われ、世間の注目が創価大の田中正義投手に集まる中、こんなニュースが報道された。

履正社の山口投手

日本ハムドラ6履正社・山口が入団拒否 岡田監督「信用問題になる」

日本ハムからドラフト6位指名を受けた山口裕次郎投手(18)=履正社=が、入団を拒否する方針であることが23日、分かった。岡田龍生監督(55)が「本人が『行きません』と言っているので、こちらとしても(プロへ)行かせることはできない」と明かした。(引用:デイリースポーツ

せっかく指名されたのにどうして?と思うかもしれないが、実はこれドラフト前からわかっていたことで、日本ハムが断られること覚悟で指名した結果なのだ。

ここでは今回の経緯について述べると共に、日本ハムのドラフト戦略について過去の事例も含めて論じてみたい。

山口選手の入団拒否の背景

今回、入団拒否を表明した山口裕次郎選手(18)=履正社=は、プロ志望届を出す時点で「4位以下の指名ならば、プロへは行かず社会人野球へ行く」と明言していた。

こうした”ドラフト順位にこだわる”というのは珍しい話ではない。上位指名と下位指名では契約金や年俸に明確な差が出てくるし、出場機会や起用方法についても上位指名選手の方が優遇されるのは間違いない。

「何位だろうと実力次第でしょ?」と思うかもしれないが、やはり同じような成績だった場合、指名順位の低い選手から戦力外(クビ)になる場合が多い。上位指名でないならば、より待遇の良い社会人野球へ行く、という考えは至極真っ当なものであると思う。

しかも、山口選手は事前に説明をしていたのだから、責められるものではないだろう。ちなみに各球団、「4位以下での指名は可能か」ということを直前に確認しているが、山口選手の意思は変わらなかったようだ。

3位までの指名枠では指名できないと判断した各球団は、本人の意思を尊重して指名を見送った。ところが日本ハムのみが、ドラフト6位指名をぶっこんできたのだ。当然のことながら山口選手は当初の意向通り入団しないことを伝えた。これが入団拒否の経緯である。

おそらく内定先のJR東日本にも、「4位以下の指名だったらプロには行かず御社に入社する」といった約束をしていたのだと思う。その約束を反故にすれば、後輩の就職の道が断たれる可能性も十分に考えられるため、やはり初志貫徹した山口選手に責められるべき点は無いだろう。

大谷翔平の例

日本ハムの特攻ドラフトは有名で、近年大きな話題となったのが大谷翔平の単独1位指名である。今や二刀流として球界を代表するピッチャー&スラッガーに成長した大谷だが、入団時にはいろいろと世間を騒がせた。

メジャー希望から一転プロ入りへ

大谷はもともと「高校からいきなりメジャー入り」というのを公言していた。誰もがメジャーに行くものと思い、各球団が指名を回避する中で、日本ハムのみが1位指名を強行。栗山監督の説得もあり、日本ハムに入団することとなった。

今となっては大谷が日本に残って良かったと思っている人も多いと思うが、当時は「一度言ったことを覆すとはなんだ」「日本ハムとの間に密約があったのではないか」など、いろいろと批判を浴びることも多かった。

私も大谷はメジャーに行くものと思っていたし、メジャーで活躍する姿を見たかっただけに残念ではあった。とはいえ、高校を卒業していきなり異国の地へ渡るプレッシャーは相当のものだと思うし、それで潰れてしまっては本人にとっても球界にとっても勿体無いので、日本ハム入りはある意味良かったのかもしれないと思う。

当時の叩きには、もちろん本人が言を翻したことへの不満もあったと思うが、それ以上に大谷を日本ハムに一本釣りされた他11球団ファンの嫉妬が多分に含まれていたのだと思う。

菅野智之の例

日本ハムのドラフト強行指名癖はさらに過去へと遡る。

強行失敗

現在、巨人のエースとして活躍する菅野智之も、日本ハムから1位指名を受けたひとりだ。

当時の巨人軍監督・原辰徳の甥でもある菅野は、「意中(巨人)以外の球団ならアメリカへ」と発言しており、巨人の単独指名による一本釣りになると思われていた。

ところが、ここでも日本ハムは1位指名を強行し、巨人との抽選の結果なんと交渉権を獲得してしまう。結局、日本ハムは菅野の首を縦に振らせることはできず、菅野は浪人の末、翌年2012年にドラフト1位で巨人に入団している。

日本ハムとしてはドラフト1位の指名権をかけて臨んだだけに、入団拒否は痛かったであろう。しかし巨人の単独指名を阻止したとして、拍手を送る人も少なからずいた。

選手・球団共に各々の持つ権利を行使した結果であり、どちらが悪いということは言えないだろう。一部で菅野を執拗に叩く向きがあるが、これについては甚だ疑問である。話が逸れてしまうためここでは触れないが、また機会をみて記事に起こせればと思う。

日本ハムのドラフト戦略

日本ハムのドラフト戦略は一貫しており、「その年の一番力がある選手を1位指名する」というスタンスを崩していない。これは菅野指名当時のGMの発言でもあり、こういった方針は見習うべき点もあるだろう。

結局、菅野にも大谷にも1位指名を強行し、1勝1敗の五分ということを考えると、それなりの戦果をあげたと言える。こうした経緯から、特攻ドラフトは日本ハムのお家芸とまで言われており、私もどんどんやったら良いと思っている。(誰しも最高の選手を贔屓の球団で見たいと思うはず)

しかし、今回の山口選手のケースは内容が若干異なる。

特攻とは似て非なる打算

そもそも今回の場合、取ろうと思えば取れたので特攻ドラフトとは言わないだろう。あえて6位という下位で指名しているあたり、「取れたらラッキーだから指名するだけしておくか」感が透けて見えてしまっている。

今回の件について、世間では賛否両論(山口選手擁護派が圧倒的に多いように見える…)だが、はっきり言って山口選手に悪い部分は無いだろう。それよりも、特攻ドラフトに味を占めて、打算的な意図が透けて見えてしまった球団側の印象が悪く映ったように思う。

とはいえプロに入れる選手はほんの一握りしか居らず、その権利を得られたという事実だけでも山口選手には自信に繋がるのではないかと思う。結局、日本ハムも指名権を無駄にしただけで、山口選手も当初の予定通り入団しなかっただけで、外野がとやかく騒ぐことではないのかもしれない。

入団拒否と聞くと過去の経緯から条件反射のように叩く人もいるが、個人的には入団拒否も選手の持つ権利のひとつでしかないと思う。入社する会社を選びたいと思う就活生の気持ちと何ら変わりはないだろう。

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