※2017年の「この選手がスゴい!1/100 コントロール部門」の記事はこちら
12月10日放送のユアタイムの中で「プロ野球100人分の1位!コントロール部門」が紹介された。
プロ野球選手100人に、各部門で最も優秀だと思う選手を投票してもらい、その年の部門ナンバーワン選手を決めるというもの。昨年まで「すぽると」で扱われていた人気企画で、番組終了に伴い2016年からは「ユアタイム」で取り上げられている。
ここではコントロール部門の投票結果を紹介するとともに、2016年度の成績と比較して、印象論とデータのズレを見てみたい。
コントロール部門の結果
番組で紹介されたコントロール部門の投票結果は以下の通り。
- 1位 菅野智之(巨人) 19票
- 2位 石川歩 (千葉) 12票
- 3位 野村祐輔(広島) 11票
- 4位 岸孝之 (西武) 10票
かなりの接戦となったが、プロ野球選手が選ぶ2016年度のコントロールナンバーワン投手は菅野智之(巨人)であった。
1位の菅野は妥当な感じがしたが、広島の黒田が入らなかったのは意外であった。野村も確かに良いピッチングは多いが、コントロールという点で考えると黒田の方が…という気がしてしまう。
BB/9による比較の結果
上記結果は、あくまで選手の印象論によるものだが、ここからはデータを用いてコントロールの良し悪しを見ていきたい。
以下の表は、2016年に規定投球回(143回)に達したセ・パ両リーグの投手のうち、BB/9(9回当たりの四球数)が少なかった上位9人+岸孝之を一覧にしたもの。(※岸については規定投球回に達していないが、上記ランキングで4位に入っているので比較のため入れている。)
選手 | BB/9 | 投回 | 四球 | 死球 | 敬遠 |
---|---|---|---|---|---|
石川歩 | 1.22 | 162 | 22 | 6 | 0 |
菅野智之 | 1.28 | 183 | 26 | 4 | 0 |
黒田博樹 | 1.78 | 151 | 30 | 3 | 3 |
美馬学 | 1.86 | 155 | 32 | 8 | 0 |
和田毅 | 2.10 | 163 | 38 | 5 | 0 |
石田健大 | 2.12 | 153 | 36 | 1 | 0 |
野村祐輔 | 2.18 | 152 | 37 | 6 | 1 |
有原航平 | 2.19 | 156 | 38 | 2 | 1 |
塩見貴洋 | 2.25 | 148 | 37 | 3 | 1 |
岸孝之 | 2.49 | 130 | 36 | 1 | 0 |
コントロールにも色々とあるが、一試合あたりの四球数が少ないというのは、コントロールを測るうえでの指標となり得るだろう。
BB/9(与四球率)だけを見ると、千葉ロッテマリーンズの石川が「1.22」でトップ。1試合(9回)あたり1個ちょいしか四球を出さないというのはかなりのもの。しかし、巨人・菅野と比較すると投球回に20回もの差があることから、同じ投球回を投げた場合にはどうなるかわからない。
ちなみに、BB/9=四球数/投球回×9で算出されるため、死球はカウントされず、敬遠は含まれる。死球は四球と同じようなものであるし、逆に敬遠は作戦上のものなのでコントロールとは関係ない。そのためBB/9(与四球率)から敬遠数を除き、死球数を追加したものを、新たにBB/9+(与四死球率)として計算すると以下の通り。
選手 | BB/9+ | BB/9 | 投回 | 四球 | 死球 | 敬遠 |
---|---|---|---|---|---|---|
菅野智之 | 1.47 | 1.28 | 183 | 26 | 4 | 0 |
石川歩 | 1.55 | 1.22 | 162 | 22 | 6 | 0 |
黒田博樹 | 1.79 | 1.78 | 151 | 30 | 3 | 3 |
石田健大 | 2.18 | 2.12 | 153 | 36 | 1 | 0 |
有原航平 | 2.25 | 2.19 | 156 | 38 | 2 | 1 |
美馬学 | 2.32 | 1.86 | 155 | 32 | 8 | 0 |
和田毅 | 2.37 | 2.10 | 163 | 38 | 5 | 0 |
塩見貴洋 | 2.37 | 2.25 | 148 | 37 | 3 | 1 |
野村祐輔 | 2.48 | 2.18 | 152 | 37 | 6 | 1 |
岸孝之 | 2.56 | 2.49 | 130 | 36 | 1 | 0 |
こうしてみると、今回のランキング1・2位については割と納得のいく結果だったと言えるだろう。
逆に、西武・岸は規定投球回に達しておらず、BB/9(BB/9+)においてもベスト10に及ばない。正直、この成績でコントロール部門に選出されたことには疑問が残るが、印象とデータが異なるものだということがよくわかる結果となった。
まとめ
非常にざっくりとした検証だが、選手の印象に残るコントロールの良い投手と、指標が良い投手は必ずしも一致しないことがわかった。おそらく選手個人の相性やマウンドに立った状況によっても、印象というのは大きく変わるのだろう。
とはいえ、BB/9(BB/9+)の指標が圧倒的(1点台前半)であれば多くの選手が「コントロールが良い」と感じることから、この指標を持って投手のコントロールをある程度測れることもわかる。
ちなみにコントロールが良い投手として、カブス移籍が決定した上原浩治がいるが、彼はプロ18年間の通算でBB/9=1.23という驚異的な数字を叩き出している。恐るべしだ。