【巨人】史上初のFA選手3人獲りで果たして「優勝は当たり前」と言えるのか?

2016年FAで巨人入団した3選手(山口俊、森福允彦、陽岱鋼)

巨人が史上初の”FA選手3人獲り”をしたことが大きなニュースとなっている。

獲得したのは、山口俊(DeNA)、森福允彦(ソフトバンク)、陽岱鋼(日本ハム)の3選手。近年、FA選手の複数獲得はよく見るが、3人同時というのは史上初であり注目が集まっている。

なかには「これだけの補強をしたのだから、来年は優勝して当たり前」といった意見も聞かれるが、正直そこまで大層な補強をしたのだろうかと疑問に感じている人もいると思う。

私もそんな疑問を持つひとりであり、ここではその理由について、過去のFA実績や3選手の直近の成績を交えて語っていきたい。

今回の「FA3人獲り」は凄いことか?

FA制度が導入された1993年以来、同一球団によるFA選手の複数獲得は全部で12回行われている(巨人8回、福岡2回、横浜1回、ヤクルト1回)。このうち巨人の8回という数字は他の追随を許さず、これが強奪球団と言われてしまう一因だろう。

FA選手を複数獲得した球団一覧

年度 球団 FA選手
1994年 巨人 川口和久(広島)
広沢克己(ヤクルト)
1999年 巨人 工藤公康(福岡)
江藤智(広島)
2005年 巨人 野口茂樹(中日)
豊田清(西武)
2006年 巨人 小笠原道大(日本ハム)
門倉健(横浜)
2010年 福岡 細川亨(西武)
内川聖一(横浜)
2011年 巨人 村田修一(横浜)
杉内俊哉(福岡)
横浜 鶴岡一成(巨人)
小池正晃(中日)
2013年 巨人 大竹寛(広島)
片岡治大(西武)
福岡 中田賢一(中日)
鶴岡慎也(日本ハム)
2014年 ヤク 大引啓次(日本ハム)
成瀬義久(千葉)
巨人 相川亮二(ヤクルト)
金城龍彦(横浜)
2016年 巨人 山口俊(横浜)
森福允彦(福岡)
陽岱鋼(日本ハム)

出典:フリーエージェント – Wikipedia

これだけFA選手の複数獲得をしてきた巨人において、今まで3人同時獲得がなかったのにはいくつか理由があるが、最も大きいのが「補償対象(A・Bランク)の選手は年2人までしか獲得できない」という制限だ。ここでいうランクとは、当該選手の年俸によって下記のように決まっている。

  • Aランク:所属球団での年俸1位~3位の選手
  • Bランク:所属球団での年俸4位~10位の選手
  • Cランク:所属球団での年俸11位以下の選手

これにより所属球団で高年俸(上位10位以内)の、いわゆる“目玉選手”については3人以上獲得することができないのだ。今回の3人については、山口、陽がBランク、森福がCランクなので3人取りが可能となった。

優勝にはAランク選手が必要?

このランクがFA選手の価値を決めていると言っても過言ではないのだが、今回はBランク2人とCランク1人で、移籍前の年俸合計は3.6億円(山口0.8億、森福1.2億、陽1.6億)であった。

2006年の小笠原&門倉の4.6億円(小笠原3.8億Aランク、門倉0.8億Bランク)や、2011年の杉内&村田の5.7億円(杉内3.5億Aランク、村田2.2億Aランク)に比べるとずいぶん安く、そのせいでいまいち大型補強感が無いのかもしれない。

実際、2007~2009年や2012~2014年のリーグ3連覇では、小笠原、杉内、村田といったAランク選手の働きが大きく、優勝奪還という目的においてはAランク選手の獲得が重要になってくる。

確かに「FA選手3人獲り」は史上初のことであり、獲得人数の多さから凄い補強のように見えるが、Aランク選手が居ないことを考えると「来年は優勝して当たり前」というほどの補強ではないと言えるだろう。

直近の成績から見える不安材料

今回FA移籍した3選手の直近3年の成績は以下の通り。

出典:NPB

2016年の成績だけ見れば十分戦力であるように感じるが、2015年の成績が3選手揃って悪いのが気になるところ。たまたまこの年だけ調子が出なかった可能性もあるが、安定感の無さにどことなく不安を覚えてしまう。

特に森福は2015年の対右の被打率が.458(24-11)だったこともあり、ここ2年は左のワンポイントに徹している。これが現・巨人の山口鉄也と被る部分もあり、一抹の不安を覚える巨人ファンは多いだろう。

このほか、先発投手にも関わらず規定投球回を1度も投げたことのない山口しかり、盗塁の減少と共に守備範囲が狭くなってきている陽しかり、成績からどことなく不安材料が見え隠れしている。

FA移籍して大成功した選手がいる一方、いまいち成績の振るわない選手もいる中で、今回の3選手はどうしても後者側に見えてしまうのが正直なところだ。各球団の試合をきっちり見ているわけではないので、上述した不安材料が実際どうなのかは何とも言えないが、なんとか今年以上の成績を残してくれることを祈るしかない。

おわりに

「優勝して当たり前」と言われると、予防線を張りたくなるのが人間の性というもので、この記事にはそういった意図が多分に含まれている。過去の補強と比べても、2007年の「ラミレス&グライシンガー&クルーン」や、2011年の「杉内&村田」ほどの絶対感はないので、安心はできないというのが正直なところだ。

おかげで随分とネガティブな内容になってしまったが、不安は期待の裏返しというように、FA移籍した3選手への期待が大きいのも事実。2年連続で優勝を逃している巨人からすると、来年の優勝にかける思いは強く、FA移籍した3選手へのプレッシャーも相当なものだろう。FAで膨れ上がった年俸(プレッシャー)に押し潰されることなく、しっかりと活躍してくれることを願いたい。