【プロ野球】ラビットボールとは?年間本塁打数が2倍だった脅威の期間

違反球

テレビのニュースで「違反球」というキーワードが大々的に取り上げられたのは記憶に新しい。

通常のボールに比べて異様に反発係数の低い(飛びにくい)球がプロ野球で使用されており、これが基準値を逸脱していることから違反球と名付けられた。

この超低反発の「違反球」と対照的なものが「ラビットボール」である。

とにかくボールがビュンビュン飛ぶため、本塁打を始めとした打撃成績が軒並み高くなる。ウサギのように飛び跳ねるボールということから、ラビットボールと名付けられた(非公式)。

このラビットボールが使用されていた時期は、とにかくホームランが量産された。ここでは、実際にどのくらいホームランが多かったかということを、年度毎の年間本塁打数(合計)のデータを示しながら説明していく。

年度別の年間本塁打数

下の表は年度別の年間本塁打数の合計をまとめたものだ。

セ・リーグとパ・リーグで分けて集計してあるが、注目したいのはその合計値である。2004年の「1994本」と、2012年の「881本」を比較すると、実に2倍以上もの差があることがわかる。

年度 合計
1997 775 668 1443
1998 662 733 1395
1999 832 737 1569
2000 818 753 1571
2001 781 1021 1802
2002 826 869 1695
2003 987 1000 1987
2004 1074 920 1994
2005 920 827 1747
2006 821 632 1453
2007 818 642 1460
2008 728 752 1480
2009 769 765 1534
2010 863 742 1605
2011 485 454 939
2012 454 427 881
2013 714 597 1311
2014 738 623 1361
2015 571 647 1218
2016 713 628 1341

出典:シーズン成績 – NPB

ラビットボールは2001年~2005年

前表の黄色赤色で色付けしてあるところは、他の年に比べて本塁打数が多いことがわかる。これがいわゆる「ラビットボール」が使用されていた時代である。(2001年~2004年とする場合も多いが、本塁打数から見ると2005年も含まれると考えるのが妥当)

ちなみに、2003年~2004年はラビットボール時代の中でも特に本塁打数が激増しているため、この時期に使用されていたボールを「スーパーラビットボール」と呼んだりもする。また、この2年のみを「ラビットボール」と呼ぶ場合もあるようなので、発言者がどの年代を意図しているかには注意を払う必要がある。

違反球は2011年~2012年

前表の青色で色付けしてあるところは、他の年に比べて極端に本塁打数が少ないことがわかる。これが先に述べた「違反球」時代である。本塁打数の合計を見れば一目瞭然だが、2011年~2012年の本塁打数は異様に少なく、いかにこのボールが狂ったものだったかがわかると思う。

この違反球時代に打撃成績が振るわず引退を余儀なくされた選手は多く、数多くの名選手が球界を去っていった。まさに失われた2年と言えるだろう。

最適なボールはどのボール?

年度別本塁打数の集計結果から、「ラビットボール」「違反球」「普通球」という3つのボールがあることがわかった。(※ただし本塁打の数がボールの影響だけとは言い切れない点に注意。打者も違えば投手も違うので、今回はあくまで本塁打数の違いからボールの種類を分別しただけ。)

果たして、どのボールが観客に望まれるものなのだろうか?

最も嫌われているのは「違反球」で間違いないだろう。この時代に野球を見ていた人ならわかると思うが、とにかく点が入らない。野球で最も盛り上がるはずの得点シーンが極端に少ないため、試合が淡々と進んでいくのである。「白熱した投手戦」ではなく「冷え冷えの貧打線」を見せられている感覚だ。この時期、防御率一点台の投手が量産されており、防御率を始めとした投手成績については他年度との比較が難しい。

残り2つのうち、どちらの方が望まれているかについては難しいところであるが、おそらく「普通球」が最も支持されると思われる。「ラビットボール」については、激しい打撃戦になるため面白いと言えば面白いのだが、明らかに打ち損じた打球でもホームランになってしまったりするので、見ていて納得がいかないことも多い。そういう意味では、やはり普通が一番ということだろうか。

ちなみに2013年以降は、違反球時代と比べれば随分と本塁打が出るようになったが、それでも以前と比べてまだまだ少ない。今ぐらいが適正だと言う向きもあるが、個人的にはもう少し本塁打が出やすくても良いのではないかと思う。

2016年に日本人野手として久しぶりに、横浜DeNAベイスターズの筒香が40本塁打の大台を超えたが、やはり40本前後で本塁打王争いが起こるくらいが一番盛り上がるのではないかと思っている。