2017年11月27日放送のTHE NEWS αの中で「プロ野球選手100人が選んだこの選手がスゴい!コントロール部門」が紹介された。
プロ野球選手100人に各部門で最も優秀だと思う選手を投票してもらい、その年の部門ナンバーワン選手を決めるというもの。2015年まで「すぽると」で扱われていた人気企画で、番組終了に伴い、2016年からは「ユアタイム」で、2017年からは「HERO’S」で取り上げられている。
昨年も全く同じ記事を書いたが、今年もコントロール部門の結果と2017年度の成績を比較して、印象とデータの違いを見ていきたいと思う。(2016年の記事はこちら)
コントロール部門の結果
番組で紹介されたコントロール部門の投票結果は以下の通り。
- 1位 菅野智之(巨人) 39票
- 2位 岸孝之 (楽天) 19票
- 3位 東浜巨 (福岡) 12票
- 4位 秋山拓巳(阪神) 8票
- 5位 田口麗斗(巨人) 4票
2位にダブルスコアの大差をつけて、菅野智之(巨人)が2年連続でコントロール部門の第1位に輝いた。
昨年と比較すると、菅野と岸は2年連続でのランクインを果たしており、東浜、秋山、田口が新たに選出されている。
順位 | 2016 | 2017 | ||
---|---|---|---|---|
1位 | 菅野智之 | 19 | 菅野智之 | 39 |
2位 | 石川歩 | 12 | 岸孝之 | 19 |
3位 | 野村祐輔 | 11 | 東浜巨 | 12 |
4位 | 岸孝之 | 10 | 秋山拓巳 | 8 |
5位 | – | 田口麗斗 | 4 |
選ばれた選手は割と順当な気がするが、菅野に票が集まった分、同じセ・リーグの秋山の票が伸びなかった印象だ。
BB/9による比較の結果
上記の投票結果は選手の印象によるものだが、ここからはデータを用いてコントロールの良し悪しを見ていきたい。
以下の表は、2017年に規定投球回(143回)に達したセ・パ両リーグの投手のうち、BB/9(9回当たりの四球数)が少なかった上位13人を一覧にしたもの。
選手 | BB/9 | 投球回 | 四球 | 死球 | 敬遠 |
---|---|---|---|---|---|
秋山拓巳 | 0.90 | 159.1 | 16 | 6 | 0 |
マイコラス | 1.10 | 188 | 23 | 11 | 0 |
菅野智之 | 1.49 | 187.1 | 31 | 1 | 0 |
野上亮磨 | 1.50 | 144 | 24 | 5 | 1 |
美馬学 | 1.73 | 171.1 | 33 | 4 | 1 |
岸孝之 | 1.94 | 176.1 | 38 | 3 | 2 |
有原航平 | 2.08 | 169 | 39 | 4 | 2 |
野村祐輔 | 2.20 | 155.1 | 38 | 4 | 0 |
二木康太 | 2.20 | 143.1 | 35 | 2 | 2 |
則本昂大 | 2.33 | 185.2 | 48 | 3 | 1 |
菊池雄星 | 2.35 | 187.2 | 49 | 6 | 0 |
東浜巨 | 2.48 | 160 | 44 | 1 | 0 |
田口麗斗 | 2.58 | 170.2 | 49 | 4 | 1 |
コントロールにも色々とあるが、一試合あたりの四球数が少ないというのは、コントロールを測るうえでの指標となり得るだろう。
BB/9(与四球率)だけを見ると、阪神タイガースの秋山が「0.90」でトップ。1試合(9回)あたり四球1個未満という驚異の与四球率を叩き出している。2位のマイコラスや3位の菅野と比較すると、投球回に30回ほどの差があるが、それでもBB/9が1を切るのは相当なものだろう。
ちなみに、BB/9=四球数/投球回×9で算出されるため、死球はカウントされず、敬遠は含まれる。死球は四球と同じようなものだし、逆に敬遠は作戦上のものなのでコントロールとは関係ない。そのためBB/9(与四球率)から敬遠数を除き、死球数を追加したものを、新たにBB/9+(与四死球率)として計算すると以下の通り。
選手 | BB/9+ | BB/9 | 投球回 | 四球 | 死球 | 敬遠 |
---|---|---|---|---|---|---|
秋山拓巳 | 1.24 | 0.90 | 159.1 | 16 | 6 | 0 |
菅野智之 | 1.54 | 1.49 | 187.1 | 31 | 1 | 0 |
マイコラス | 1.63 | 1.10 | 188 | 23 | 11 | 0 |
野上亮磨 | 1.75 | 1.50 | 144 | 24 | 5 | 1 |
美馬学 | 1.89 | 1.73 | 171.1 | 33 | 4 | 1 |
岸孝之 | 1.99 | 1.94 | 176.1 | 38 | 3 | 2 |
有原航平 | 2.18 | 2.08 | 169 | 39 | 4 | 2 |
二木康太 | 2.20 | 2.20 | 143.1 | 35 | 2 | 2 |
則本昂大 | 2.42 | 2.33 | 185.2 | 48 | 3 | 1 |
野村祐輔 | 2.43 | 2.20 | 155.1 | 38 | 4 | 0 |
東浜巨 | 2.53 | 2.48 | 160 | 44 | 1 | 0 |
菊池雄星 | 2.64 | 2.35 | 187.2 | 49 | 6 | 0 |
田口麗斗 | 2.74 | 2.58 | 170.2 | 49 | 4 | 1 |
こちらでも、阪神タイガースの秋山がダントツのトップ。秋山は今年頭角を現したばかりなので、まだまだ票が伸びてこないが、来年以降も同様の成績を残せれば、コントロール部門の1位に輝く日も近いだろう。
こうして見ると、秋山(1位)、菅野(2位)あたりのランクインは順当に思えるが、岸(6位)、東浜(11位)、田口(13位)あたりは、投票結果と少し乖離しているように思える。
もちろん四球の数だけでコントロールの全てが測れるわけではないので、ここらへんはBB/9だけで比較することの限界なのだろう。
まとめ
非常にざっくりとした比較だが、選手の印象に残るコントロールの良い投手と、BB/9が良い(四球を出さない)投手は必ずしも一致しないことがわかった。
これは当たり前の話だが、ストライクゾーンで勝負できるパワーピッチャーと、コースギリギリを狙う必要がある軟投派投手では、四球のリスクは同じではないだろうし、どちらのコントロールが良いかをBB/9だけで判断するのは難しい。
BB/9で2位のマイコラスがランキング圏外で、BB/9で13位の田口が5位にランクインしているあたり、BB/9だけでは測れないコントロールの良さがあるのは間違いないだろう。
とはいえ、BB/9(BB/9+)の指標が圧倒的であれば多くの選手が「コントロールが良い」と感じることから、この指標を持って投手のコントロールをある程度測れることもわかる。
来年も菅野、岸、秋山あたりはランクインしてくると思うが、今オフに巨人へFA移籍した野上が地味にBB/9で4位にいることから、来年どうなるかを楽しみにしたいと思う。